1.成田、羽田、関西空港は、現状として、慢性的な混雑と容量制限中
首都圏の航空需要は極めて高く、発着枠(スロット)は常に逼迫しています。
特に貨物便は、旅客便が優先される時間帯を避けざるを得ない場合があります。
24時間運用可能な国際貨物ハブですが、アジア・欧米からの多くの便が集中し、こちらも処理能力の向上が常に課題となっています。
トラックドライバーの時間外労働規制強化により、陸上での長距離輸送能力に懸念が生じています。これにより、国内の長距離輸送において、陸送から空路・海路へのモーダルシフトが加速する可能性があります。
ウクライナ侵攻に対する経済制裁として、多くの西側諸国の航空会社はロシア上空を飛行できません。
この結果、ヨーロッパと日本を結ぶ便は、中央アジアやアラスカを経由する南回り・北回りの迂回ルートを強いられています。
これにより、飛行時間が2~4時間増加し、燃料費も大幅に増大しています。
現時点(2025年8月)で、両国の紛争終結や恒久的な和解に向けた具体的な道筋は見えていません。
ロシア上空の飛行制限は、中長期的に継続する可能性が高いと考えるのが現実的です。
仮に和解が成立したとしても、一度変化したサプライチェーンや航空会社の路線戦略が、すぐさま元に戻るとは限りません。
地政学リスクを避けるため、航空路の複線化・代替ルートの確保は、航空会社にとって重要な経営課題として残ります。
● 北九州空港3000m滑走路の活用に向けた具体的な対策・準備案
北九州空港は「主要空港の補完」という位置づけを超え、「新たな国際情勢に対応する戦略的拠点」としての地位を確立すべきです。
南回りルートを飛行する欧州便は、積載量を減らすか、途中で給油する必要があります。
北九州空港の24時間運用可能な3000m滑走路は、この給油・乗員交代のための中継地点(テクニカルストップ)として最適な立地です。
まずは貨物便をターゲットとし、特に深夜・早朝帯の受け入れを積極的にアピールします。
「シリコンアイランド」と呼ばれる九州の半導体関連製品や、自動車部品の輸出入拠点としての役割を強化します。
◎ アジアで製造された部品を北九州空港で集約し、欧米へ輸出する「ハブ&スポーク」型の物流モデルを構築します。
九州各地の豊富な農水産品や、製薬会社の多い地域の医薬品などをターゲットにします。
深夜早朝の貨物便に迅速に対応できる体制を国や関係機関と連携して構築します。
B747-8Fなどの大型貨物機を効率的に取り扱うための機材導入と人材育成。
空港周辺地域に、国際物流のキープレイヤーである大手フォワーダーの拠点を誘致するための優遇策を検討します。
まずは定期便ではなく、インバウンド需要を狙ったチャーター便を誘致します。
北九州空港は、特定の需要(例:欧州からのアニメ聖地巡礼ツアー、スポーツ合宿など)に特化したニッチな路線を開拓します。
主要空港の混雑を嫌う富裕層や企業のビジネスジェット需要を取り込みます。
24時間運用と迅速な出入国手続きを強みとしてアピールします。
貨物だけでなく、旅客のスムーズな動線を確保するためのターミナル機能の強化。
チャーター便の乗客が目的地までスムーズに移動できるよう、バスやタクシー会社との連携を強化します。
仮にロシア上空の飛行が再開されたとしても、一度構築したテクニカルストップ拠点としての実績や貨物ハブとしての利便性は、北九州空港の大きな資産となります。
航空会社にとって、地政学リスクを分散できる代替拠点としての価値は失われません。むしろ、平常時においても、主要空港の混雑を避けるための選択肢として定着する可能性があります。
九州の空の玄関口である福岡空港と競合するのではなく、それぞれの強みを活かした役割分担を明確にし「北部九州ゲートウェイ」として一体的なプロモーションを行うことが不可欠です。
空港へのアクセス道路や公共交通機関の利便性向上が、貨物・旅客双方の利用者を増やすための鍵となります。